
川井田 健晃 / KAWAIDA TAKEAKI
少し遠いものがたり
2025.5.24 ~ 2025.6.29
使われなくなった祖母の舞台と埃をかぶった一冊の本。
語られずに残された物語の気配。
川井田健晃は、記憶と想像のあいだにある “余白” に目をこらし、描くことを通じて、語られなかった物語を静かに手繰り寄せます。
これまで川井田は、「フィクション」という視点から宗教や国家、貨幣、スポーツなど、人間がつくり上げてきたあらゆる価値観の成り立ちを見つめてきました。
そしてその根源には、「線を描く」という原始的な行為があると考え線そのものをモチーフにした作品を制作してきました。
本展では、その線の軌跡に「余白」という視点を重ね、確かな記憶と曖味な想像のあいだを往還するように作品群を発表します。
明確に定義されないもの、語られずに残る部分にこそ人の想像は自由になる。
”見えないもの” にこそ惹かれるという作家の感覚は、幼い頃に過ごした祖母の家と、そこにあった日本舞踊の舞台という記憶に静かに端を発しています。
本展「少し遠いものがたり」は、語られなかった物語との距離に耳を澄ますような試み。
描かれる線は、何かを語るためではなく、語られなかったものと向き合うために引かれています。
川井田 健晃 | Takeaki Kawaida
鹿児島県出身、大学卒業後約10年間にわたり建築設計に従事。
その後、「箱を最小単位とし、生活空間を構成する」というコンセプトのもと、クラフトブランド STACK CONTAINERSを立ち上げる。同プランドの製作過程で生じる紙の端材や、クラフト仲間から譲り受けたさまざまな素材を活用し、表現活動を開始する。